TechPowerUPに『RTX4090+Core i9-13900K』vs『RTX+Ryzen7 5800X』の53タイトルに及ぶゲームを用いたベンチマーク比較が掲載された。
非常に興味深い結果が出ているので2022年末のゲーミングPC市場と紐づけて最適解を考えてみる。
TechPowerUPの元記事はこちらから。
Core i9-13900KとRyzen7 5800X3Dの概要
Core i9-13900K
Core i9-13900Kは2022年10月に販売が開始されたIntel最新第13世代CoreシリーズのCPUで、24コア32スレッド3.0GHz~5.8GHzを誇る長兄モデル。
要するにこの記事を書いている2022年11月時点で”一番高くて一番強い”CPU。
価格は約10万円。
Ryzen7 5800X3D
Ryzen7 5800X3DはAMD Ryzenシリーズでは最新7000番台より1世代前となる5000番台のシリーズで発売は2022年4月、さらに言えば長兄となるRyzen9ではなくミドルハイスペックにあたるRyzen7であり、スペックの数値的には8コア16スレッド3.4GHz~4.5GHz。
ただし、Ryzenシリーズでも唯一「AMD 3D V-Cache」テクノロジーが搭載されたCPUという特徴がある。
価格は約5万円。
Ryzen7 5800X3Dが再注目される理由
ではなぜ今になって最新i9-13900KとRyzen7 5800X3Dが比較されるのかというと、思いつく理由はザックリ2つほどある。
AMD 3D V-Cache
Ryzen7 5800X3Dに搭載されるAMD 3D V-Cacheテクノロジーとは、一言で言えば”キャッシュメモリー爆盛”を指す。
キャッシュメモリーとはCPU内部に搭載されるメモリのことで、メインメモリーよりもアクセスが速い。
そしてキャッシュメモリーの搭載量はゲームパフォーマンスに特に効くと言われている。
IntelとAMDではそもそも設計が違うため数値だけで比較できるものではないが、公式のカタログスペックでCore i9-13900Kの合計L2キャッシュは32MB、Ryzen7 5800X3DはL2キャッシュ4MB+L3キャッシュ96MBとされている。
そしてこのAMD 3D V-Cacheがもたらすゲーミング性能は異端モデルとして大きな注目を集めていた。
Ryzen 7000番台のトータルコスト高
Ryzenは最新7000番台からCPUソケット形状や対応メモリ規格を刷新したおかげで周辺パーツを含めた導入コストが高く、売れ行きはあまり良くないらしい。
結果、最新モデル販売開始に合わせて値が下がり始めたRyzen5000番台のコストパフォーマンスが際立ち、その中でもゲーミング性能に特化したRyzen7 5800X3Dが再注目されているという事情がある。
要するに『Core i9-13900K vs Ryzen7 5800X3D』の比較は『最新最強CPU vs コスパ最強変態CPU』の比較という意味を持つ。
Core i9-13900KはRyzen7 5800X3Dよりも平均6.2%速い
ベンチマーク結果の詳細はTechPowerUPのサイトを見てもらうとして、平均するとゲームパフォーマンスに於いてCore i9-13900KはRyzen7 5800X3Dよりも
・フルHD環境では平均6.2%速い
・2K環境では平均4.7%速い
・4K環境では平均1.3%速い
という結果になっている。
当然、最新最強CPUであるCore i9-13900Kの方が優れているということは誰でも想像できた結果ではあるが、注目すべきは『平均で6.2%しか差が無かった』ということだろう。
最近のCPU性能の進化は目まぐるしく、1世代の差はかなり大きい。
さらに言えばCore i9のライバルグレードはRyzen9にあたるはずなのだが、今回の比較対象は下位グレードのRyzen7である。
それでいてこの程度の性能差しか生じなかったということに驚きである。
もちろんこれはキャッシュメモリの搭載量が及ぼすゲーミング性能の差であって、ゲーミング以外の各種処理における優位性や性能差という面ではCore i9-13900Kが大きくRyzen7 5800X3Dを引き離すであろうことは補足しておく。
コスト差はCPU単体価格だけではない
ここまで見て如何にRyzen7 5800X3Dの変態特化性能っぷりが尖っているかを想像していただけると思うが、コストを念頭に置くとRyzen7 5800X3Dの魅力がさらに引き立って見えることも注目である。
CPU単体価格では2022年11月時点でCore i9-13900Kが約10万円、Ryzen7 5800X3Dが約5万円なので2倍の開き、5万円の価格差がある。
これだけでもRyzen7 5800X3Dにとって大きな魅力だが、さらには周辺パーツの構成でもさらにコスト差が開くことになる。
上記のベンチマークテストではCore i9-13900Kは最新DDR5規格のメモリを、Ryzen7 5800X3Dは前世代のDDR4規格のメモリを使用している。
さらにRyzen7 5800X3Dに関しては前世代規格となるAM4ソケット対応のマザーボードで駆動するため数年前のマザーボードですら動かすことが可能で、安く枯れた安定システムを組みやすいという利点がある。
また定格電力(intelカタログでは”ベースパワー”)においてもCore i9-13900Kは125W(ピーク出力時は300W近い!)、Ryzen7 5800X3Dは105Wと開きがあるため、消費電力コストや発熱を抑えるクーラーにかかるコストなどを考慮するとさらにRyzen7 5800X3Dが優位に立つことになる。
最新最強にこだわらなければRyzen7 5800X3D
もちろんゲーミングPCはプロを除けば趣味の道具であり、購入の基準は人それぞれ。
コストよりも”最新最強”にこだわって選ぶなら断然Core i9-13900Kということになる。
が、最新最強のこだわりが無いなら2022年末のイチオシはRyzen7 5800X3D搭載PCを第一に考えてもよさそうな気配である。
性能面で言えば、主観だが正直Core i9-13900Kをはじめとする最近のフラッグシップモデルにはオーバースペック感すら感じている。
ゲームをストレスフリーで快適に遊ぶという目的ならぶっちゃけそこまでの性能は必要ない。
と感じている人はきっと私だけではなく、そんなミドルハイ好きのユーザーがこのベンチマーク結果を見てRyzen7 5800X3Dに再注目することになるなら、在庫があるうちに1個買っておこうかと今まさに考えている。