BTOパソコン国内最大手のドスパラから、新しいゲーミングブランド『THIRDWAVE-G(Lightning-G/Magnate-G)』が登場しました。
ここではこれら新ブランドの特徴から、ドスパラの新戦略やターゲット層を読み解いていきます。
THIRDWAVE-G(Lightning-G/Magnate-G)のコンセプト
新登場のTHIRDWAVE-G(Lightning-G及びMagnate-G)のコンセプトは
「コスパも光る、高性能PC」
「ゲームもできる、コスパも光る」
「学校のレポート作成はもちろん、人気のゲームから動画配信まで、たくさんの【やりたい】をコスパよく実現しよう」
といったように『コスパ』を全面的に押し出しています。
対して従来から展開してきたゲーミングブランド「GALLERIA」は
「比類なきパフォーマンス、最高のフレキシビリティ(柔軟性)。」
というコンセプトで高性能を全面的に推しています。
GALLERIAの弟分!?
そもそもドスパラ『GALLERIA』といえば、Palitなど専売モデルのパーツを駆使して他社よりもコストを下げた「コスパに優れたゲーミングPC」のイメージを持つユーザーも多いと思います。
新ブランド「THIRDWAVE-G」はそのGALLERIAよりも強くコスパをアピールしており、GALLERIAよりも価格帯を下げた弟分的な立ち位置ということになります。
そして実は、「THIRDWAVE」「Lightning」「Magnate」といったブランド名はこれまでも使われてきた名前で、主に一般/ビジネス向けのPCラインナップを表していました。それを今回「-G」を冠してゲーミングブランドに仕立てて来たことからも、
ゲーミングPC『GALLERIA』 > ゲームもできるパソコン『THIRDWAVE-G』
という関係性であることが読み取れます。
Lightning-GとMagnate-Gの違い
THIRDWAVE-Gのラインナップの中には「Lightning-G」と「Magnate-G」の2種類があります。
両者の違いは搭載されるCPUで
Lightning-G・・・AMD製CPU
Magnate-G・・・Intel製CPU
というルールで命名されています。CPUのメーカーが違うためマザーボードなどの対応パーツも必然的に違うことになりますが、それ以外のPCケースや各種基本パーツに特別な違いはありません。
THIRDWAVE-Gが安い理由
ここからはTHIRDWAVE-G(Lightning-G、Magnate-G)に搭載されるパーツを例に、THIRDWAVE-Gが安い理由を推察していきます。
CPU
THIRDWAVE-G(Lightning-G、Magnate-G)のラインナップを見ると、Lightning-Gの最安モデルは「Ryzen5 4500」、Magnate-Gの最安モデルは「Intel Core i5-12400」がチョイスされています。
AMD Ryzen5 4500 | Intel Core i5-12400 | AMD Ryzen5 7500F | Intel Core i5-14400F | AMD Ryzen7 5700X | AMD Ryzen7 7700 | AMD Ryzen7 7800X3D | |
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リリース | 2022/4/4 | 2022/Q1 | 2023/6/22 | 2024/Q1 | 2022/4/4 | 2023/1/14 | 2023/4/6 |
世代 | Zen2 | 12世代 | Zen4 | 14世代 | Zen3 | Zen4 | Zen4 |
コア/スレッド | 6/12 | 6/12 | 6/12 | 10(P6:E4)/16 | 8/16 | 8/16 | 8/16 |
動作クロック | 3.6~4.1GHz | 2.5~4.4GHz | 3.7~5.0GHz | 2.5~4.7GHz (P) | 3.4~4.6GHz | 3.8~5.3GHz | 4.2~5.0GHz |
キャッシュメモリ | 8MB (L3) | 18MB (IntelSmartCache) | 32MB (L3) | 20MB (IntelSmartCache) | 32MB (L3) | 32MB (L3) | 96MB (L3) |
CPUコア製造プロセス | 7nm | Intel 7 | 5nm | Intel 7 | 7nm | 5nm | 5nm |
TDP | 65W | 65W | 65W | 65W | 65W | 65W | 120W |
対応ソケット | AM4 | FCLGA1700 | AM5 | FCLGA1700 | AM4 | AM5 | AM5 |
メモリタイプ | DDR4 | DDR4 DDR5 | DDR5 | DDR4 DDR5 | DDR4 | DDR5 | DDR5 |
グラフィックス | — | Intel UHD Graphics 730 | — | — | — | AMD Radeon Graphics | AMD Radeon Graphics |
Ryzen5 4500
Ryzen5 4500は最新Zen5の9000シリーズから見ればデスクトップ向けCPUで3世代前のZen2世代CPUです。当然パーツ価格としてはかなり抑えられた選択であり、性能的に見ても最新世代から見ればかなり劣るものになります。ゲーム性能に影響が大きいキャッシュメモリの搭載量も少なく、CPU単体のベンチマーク結果以上にゲーミング性能としては低いものになります。
具体的に言えば、RTX4060と組み合わせた場合Ryzen5 4500の性能がボトルネックになってRTX4060の性能を引き出しきれないケースが見受けられるレベルです。
ただしLightning-GのラインナップではRTX4060よりも性能が低いRTX3050やRadeon RX6600との組み合わせた場合にボトルネックとなる度合いは低く、絶対性能よりも購入価格を重視するゲーミングPCビギナーやライトゲーマーにとっては「買いやすい選択肢」として有効なチョイスになり得ます。
逆に言えばそれ以上のGPUを望む場合は組み合わせるCPUももう少し性能が高いIntel Core i5-12400やそれ以上のCPUを視野に入れるほうが良いでしょう。
Intel Core i5-12400
Intel Core i5-12400は最新第14世代Coreから見て2世代前の第12世代CPUです。同じく12世代のCore i5-12600はPコア6、Eコア4の計10コアCPUですが、Core i5-12400はPコア6のみ搭載の6コア12スレッド設計でその分価格面も低く抑えられています。
とはいえIntelのEコアとは省電力用の低出力コアを指すため、ピーク出力やゲーミング性能という意味では大きな差にはなりません。
Core i5-12400とRTX4060の組み合わせでは明らかなボトルネック的な性能ダウンは見られないため、実質的にTHIRDWAVE-GでRTX4060をチョイスする場合の最低ラインとなるCPUだと思って良いでしょう。
GPU
THIRDWAVE-G(Lightning-G,Magnate-G)の最安モデルには「RTX3050」搭載モデルがラインナップされ、ついで「Radeon RX6600」が並びます。
RTX3050
RTX3050はNVIDIA製のGPUで、RTXシリーズでは最新の4000シリーズに比べて1世代前モデル。さらにエントリークラスを指すナンバリング「〇〇50」は4000シリーズには存在しません。
立ち位置としては旧GTXシリーズからの載せ替え需要に対する最低限の受け皿として設定された感が強いモデルで、性能的にもGTX1660SUPERとほぼ同等の性能にRTX特有のDLSSなどの機能を付け加えた程度。3Dゲーム/フルHD解像度で高画質高fpsを目指す場合に早い段階で性能不足にぶつかることが多く、ゲーミング性能だけで見ればPS5やxboxなどのCS機と比較してもあまりアドバンテージを感じることはないでしょう。
購入価格を極力抑えながら「ゲームも出来る一般向けパソコン」的なコンセプトに当てはまるエントリー層やライトゲーマー向けの選択肢だと言えます。
一般的なゲームタイトルをフルHDで一通り快適に遊べるスペックを求めるならRTX4060を最低ラインとして考えることをおすすめします。
PCケース
外観で言えば、THIRDWAVE-Gはシンプルデザインでコンパクトなケースが採用されています。
おそらくはどこかのPCパーツメーカーが一般販売している市販ケースのOEMに近いモデルだと思われ(筆者の勝手な予測です)、GALLERIAのような専用デザインを起こさない分ケース単体の原価は抑えられていると考えられます。
GALLERIAに比べて搭載可能ファン数が少ないこと、内部寸法的に搭載可能なグラボサイズに制限があることなどから拡張性や限界性能は必然的に低くなりますが、THIRDWAVE-GのラインナップがRTX4070SUPERをアッパーとしたミドルハイクラスまでに限定されていることと合わせると必要充分ということなのでしょう。
なおPCケースに関してはデザインの好みに個人差があるため、これまで述べたことが必ずしもマイナスにはならない場合もあります。
筆者個人的にはGALLERIAケースよりもコンパクト且つシンプルなTHIRDWAVE-Gケースの方がデスクに馴染むので好感が持てます。またGALLERIAよりもサイドパネルの透明な面積が大きいため、内部パーツを魅せる構成を重視するならこちらの方がより魅力的だとも言えるでしょう。
ラインナップの最低スペックを低く設定
THIRDWAVE-GのラインナップからCPU、GPU、PCケースを重点的に見てきた結果、基本的には「最低スペックを低く設定しているから最安モデルが安く見える」というのが安さの理由です。
おそらくはGALLERIAよりも「性能面にこだわらないユーザー」を掘り下げるイメージでしょう。
またAMD製CPUを数多く採用しているのも安く見える工夫でしょう。最近では性能あたりのコストでIntelとAMDに大きな差はありませんが、AMDはCPUソケットを長年共通仕様で使い続けるというユーザーフレンドリーなメリットがあるため、販売店側から見ても数世代前のCPUをラインナップに加えた場合にマザーボードの在庫管理にコスト的なメリットがあるのかも知れません。
THIRDWAVE-G(Lightning-G,Magnate-G)のターゲット
GALLERIAが高性能&専用ケースで性能至上主義のガチゲーマーをターゲットにしているとすれば、THIRDWAVE-Gは手頃な価格構成&汎用(っぽい)ケースでコンセプト通りの「ゲームも出来るパソコン」を高コスパで提供し
・PCゲームエントリー層
・ライトゲーマー
・普段使いの一般/ビジネス向けパソコンにプラスα性能を付加したい幅広いパソコンユーザー
をターゲットにしていると言えます。
とはいえGALLERIAですら元々コスパの高さが特徴ですし、THIRDWAVE-Gのラインナップもミドルハイクラスまで揃っているのでGALLERIAとTHIRDWAVE-Gの性能やコスト面での差は実はそれほど大きくありません。
明確な差といえばPCケースの見た目が違うことくらいなので、スペックを落としてでも安く買いたい場合はTHIRDWAVE-G、どちらにもラインアップされているスペックを狙うなら見た目の好みで選んでもいいでしょう。