2024年8月2日、AMDは旧AM4ソケットに対応したZen3世代の新CPU「Ryzen9 5900XT」「Ryzen7 5800XT」を発売しました。
AM4ソケット対応Zen3世代CPU
AMDのCPUソケットは2022年9月のZen4世代Ryzen7000シリーズを境にAM5ソケットに移行し、さらに2024年8月にはZen5世代となる最新Ryzen9000シリーズを発売します。
が、ここでほぼ同時に旧システムとなるAM4ソケット対応のZen3世代CPU「Ryzen9 5900XT」「Ryzen7 5800XT」を新たにラインナップに加えました。
Ryzen9 5900XT/Ryzen7 5800XT スペック
Ryzen5000シリーズ スペック比較
Ryzen9 5950X | Ryzen9 5900XT | Ryzen9 5900X | Ryzen7 5800XT | Ryzen7 5800X | Ryzen7 5700X | |
---|---|---|---|---|---|---|
リリース | 2020/11/6 | 2024/8/2 | 2020/11/6 | 2024/8/2 | 2020/11/6 | 2022/4/15 |
世代 | Zen3 | Zen3 | Zen3 | Zen3 | Zen3 | Zen3 |
コア/スレッド | 16/32 | 16/32 | 12/24 | 8/16 | 8/16 | 8/16 |
動作クロック | 3.4~4.9GHz | 3.3~4.8GHz | 3.7~4.8GHz | 3.8~4.8GHz | 3.8~4.7GHz | 3.4~4.6GHz |
L1キャッシュ | 1024KB | 1024KB | 768KB | 512KB | 512KB | 512KB |
L2キャッシュ | 8MB | 8MB | 6MB | 4MB | 4MB | 4MB |
L3キャッシュ | 64MB | 64MB | 64MB | 32MB | 32MB | 32MB |
CPUコア製造プロセス | 7nm | 7nm | 7nm | 7nm | 7nm | 7nm |
I/Oダイ製造プロセス | 12nm | 12nm | 12nm | 12nm | 12nm | 12nm |
TDP | 105W | 105W | 105W | 105W | 105W | 65W |
対応ソケット | AM4 | AM4 | AM4 | AM4 | AM4 | AM4 |
PCIe ver. | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 |
メモリタイプ | DDR4 | DDR4 | DDR4 | DDR4 | DDR4 | DDR4 |
グラフィックス | — | — | — | — | — | — |
グラフィックスコア | — | — | — | — | — | — |
グラフィックス周波数 | — | — | — | — | — | — |
リリース日価格 | 96,800 | 69,800 | 64,980 | 44,800 | 53,480 | 33,800 |
実勢価格 | 74,480 | 48,980 | 30,980 | 22,480 |
Ryzen9/Ryzen7 ベンチマーク比較
PassMarkベンチマークスコアをグラフ化しています。
Ryzen9 5900XT/Ryzen7 5800XT 評価
AM4システムの延命目的
すでにAM5システムに移行したRyzen7000シリーズ及び最新Ryzen9000シリーズが市場にある状態ではありますが、AM4システムは2016年からAM5が登場する2022年までの約6年もの長い間第一線で使い続けられたことから未だに高いシェアを誇っていると考えられます。
性能面ではRyzen5000→Ryzen7000→Ryzen9000と世代が進むにつれて当然スペックアップはしているもののどちらかと言うと省電力性能の伸びの方が大きく、ビジネス用途でもゲーム用途でもZen3世代であるRyzen5000シリーズの性能でも未だに不足を感じることは有りません。
Ryzen9 5900XT及びRyzen7 5800XTは設計、性能面で5900X及び5800Xから特に変化も進化もないことから、単純にAM4システムをもう少し使い続けたいユーザーの買い替え、スペックアップ目的や、AM4ソケット搭載マザーやDDR4メモリの在庫を有効活用したいショップ向けのAM4延命が目的だと言っていいと思います。
Intel 第13・14世代Coreの不具合が判断材料に?
2024年8月時点ではIntel 第13・14世代Coreの不具合問題が世界中で騒がれており、保証や交換などの対応もまだはっきりとは定まっていません。
▶Intelが保証対象のCPUを発表(外部サイト ASCII.jp)
PCパーツの規格としてはIntelユーザー、AMDユーザー共にDDR5メモリやPCIe5.0といった新規格へ対応したシステムへの買い替えが進むはずだったタイミングですが、「不具合が収束するまでは最新規格は様子見して、もう少し今のシステムを使い続けようかな?」と考えるユーザーが増えても不思議ではありません。
そういった意味ではAM4システムの延命目的で5900XT及び5800XTを市場投入したことの意義は強まっていると言えるかも知れません。
が、価格の面でみればRyzen5000シリーズは既に実勢価格でかなりの値下がりをしているため、性能面でとくにメリットのない5900XT及び5800XTを割高な価格で買う意味は薄いと言えるでしょう。AM4のCPUを買い替えるなら既存のRyzen5000シリーズや、ゲーミング性能で上回るX3Dモデルを狙った方がお得感は強いと思います。