2025年現在、AI機能の統合が進むパソコン市場で、「AI PC」「Copilot+ PC」「Chromebook」「Chromebook Plus」という複数のカテゴリが存在し、それぞれ異なる定義と特徴を持っています。
以下にそれぞれの関係性をまとめます。
定義早見表
AI PC | Copilot+ PC | Chromebook | Chromebook Plus | |
---|---|---|---|---|
OS | なんでも | Windows11 | Chrome OS | Chrome OS |
ハードウェア要件 | NPUを搭載 | ・40TOPS以上のNPU ・16GB以上のメモリ ・256GB以上のSSDorUFS | なし | ・Intel Core i3(第12世代以降)またはAMD Ryzen 3(7000シリーズ以降)のCPU ・8GB以上のメモリ ・128GB以上のストレージ ・フルHD解像度のIPSディスプレイ ・1080pのWebカメラ |
AI処理区分 | なんでも | なるべくオンデバイス | クラウド | ほぼクラウド |
AI PCとは
- 「AI PC」は、AI処理に特化したNPU(Neural Processing Unit)を搭載したパソコンの「総称」です。CPUやGPUが担っていたAI関連の処理をNPUに任せることで、パソコンのパフォーマンスを落とさずにAI機能を快適に利用できるように設計されています。ただし、「AI PC」と呼ばれるためのNPU性能に明確な基準はありません。
Copilot+ PCとは
- 「Copilot+ PC」は、Microsoftが提唱する新しいパソコンのカテゴリであり、AI PCの中でも「マイクロソフトが定めた厳しいハードウェア要件をクリアしたモデル」だけが認定される「ブランド名」です。
- Copilot+ PCの主な要件には、40 TOPS(1秒間に40兆回の演算)以上の性能を持つNPU、16GB以上のメモリ、256GB以上のSSDまたはUFSストレージ、そして専用の「Copilotキー」の搭載が必須とされています。
- これらの要件を満たすことで、Copilot+ PCはインターネットに接続していなくても、ローカル環境で一部のAI処理を実行できます。例えば、Recall(追体験)機能や、ペイント内での画像生成(Cocreator)、リアルタイム翻訳、Windows Studioエフェクトなどが利用可能です。
- したがって、すべてのCopilot+ PCはAI PCですが、すべてのAI PCがCopilot+ PCというわけではありません。Copilot+ PCは、Microsoftのお墨付きを得た、次世代のAI体験を提供する高性能なパソコンと言えます。
Chromebookとは
- 「Chromebook」は、Googleが開発したChromeOSを搭載したパソコンです。その核となる価値は、シンプルさ、堅牢なセキュリティ、そしてGoogleのクラウドサービスと深く統合されたWeb中心のワークフローにあります。
- 標準的なChromebookはエントリーレベルのコンポーネントで構成されることが多く、AI機能は主にクラウドベースの基本的なAI提案などに限定されます。
Chromebook Plus
- 「Chromebook Plus」は、標準Chromebookに対するユーザーの不満点に対処するため、Googleが定めた大幅に引き上げられたハードウェアのベースラインを保証するブランドです。
- これには、Intel Core i3(第12世代以降)またはAMD Ryzen 3(7000シリーズ以降)のCPU、最低8GBのRAM、最低128GBのストレージ、そしてFHD(1920×1080)解像度のIPSディスプレイと1080pのウェブカメラが必須要件として含まれます。
- Chromebook Plusは、GoogleのクラウドファーストAI、特にGeminiモデルを搭載した生成AI機能を快適に利用するための「体験の保証」として位置づけられています。これらのAI機能は主にクラウドで実行されます。
- 一部の新しいChromebook Plusモデルは高性能なNPUを搭載し始めており、これは将来的にオンデバイスAIへのシフトを可能にする重要な進化の節目と見られています。


MicrosoftとgoogleのAIに関する哲学と戦略の違い
Googleは手頃な端末とクラウドAI重視
Googleの戦略は、自社の強みであるクラウドコンピューティングとAIサービス(Gemini)を、ChromebookおよびChromebook Plusという手頃な価格の主流ハードウェアで利用可能にすることで、AIを民主化し、できるだけ多くのユーザーに届けることに重点を置いています。
GoogleのAIを含めたアプリ全般はネット環境さえあればブラウザ上で動作するため、PC側に求めるハードウェア要件は低く、初期投資が低く抑えられます。
なおGeminiを中心としたAIツールをある程度使い倒すためにはサブスクリプションの加入が必要になり、ハードウェアコストが低い反面、月額のランニングコストは多少必要になってきます。
Chromebook Plusを購入すると12ヶ月間Google AI proプランを無料で利用できる特典(2025年7月時点)なども展開しているので、上手に組み合わせてGoogleのAIサービスをリーズナブルに体験してみてください。
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Microsoftは高性能端末とオンデバイスAIを重視
一方、MicrosoftのCopilot+戦略は、40 TOPSを超えるNPUという厳格な要件によって、新しいプレミアムな「オンデバイス」AI体験を実現することを目指しています。これは、低遅延、プライバシーの強化、オフラインでの利用可能性に焦点を当てたハイブリッドモデルです。
ただし、求められる性能が高い分Copilot+ PCブランドを冠するノートPCは高価になります。
Copilot+ PC構想はまだ未完成
また、オンデバイスAIといっても現時点の技術ではNPUが負担できるAI処理には限界があります。負荷の低い限定的な機能をオンデバイスで動作させることは可能でも、Microsoft CopilotなどのLLM(大規模言語モデル)の動作は依然としてクラウドに依存せざるを得ません。
そのためビジネスAIツールとしてヘビィユースするためには結局月額課金が必要になってしまうという点において、オンデバイスAIを重視するCopilot+ PCの戦略はまだ未成熟であると言わざるを得ないでしょう。