2021年11月、Intel 第12世代CPU「Alder Lake」が発売されました。
ここ数年、AMD Ryzenシリーズの圧倒的な性能/コストパフォーマンスに押されてシェアを削られ続けてきたIntelですが、第12世代CPUでは基本設計を一新することで飛躍的な性能アップを果たし、ついにAMDとのパワーバランスを互角以上に巻き返すことに成功した模様。
界隈ではIntelの逆襲劇に注目が集まっているようです。
ここではそんなIntel 第12世代CPU及び搭載PCの特徴や買い方について、あえてマニアックな領域には踏み込み過ぎないように、PC初心者向けにわかりやすく考察していきます。
Intel 第12世代core「AlderLake」の概要
まずは簡単にAlderLakeについて。
第12世代core「AlderLake」は起死回生の一打?
Intelは長年、CPU市場で「PC(CPU)と言えばIntel」と言っても過言ではない絶大なシェアを誇っており、競合となるのは一部のマニアックなファンに支持されていたAMD製CPUくらいでしたが、AMDは安さ以外にこれといったアドバンテージもなくライバルとも言えない存在でした。
が、CPUが多コア時代に突入する2017年ころから登場したAMD製CPU Ryzenシリーズが代を重ねるごとに大幅な進化を遂げ、マルチコア性能とコストパフォーマンスでIntel coreシリーズを圧倒し始めます。
基本設計の刷新に足踏みしたIntel coreシリーズはその後もRyzenシリーズに追いつけず、ずるずるとシェアを明け渡していきました。
そして2021年11月、ついに基本設計の刷新が成就したIntelが第12世代core「AlderLake」を発売。
性能面でようやくAMD Ryzenと互角以上の力を手に入れたIntelの逆襲が始まる・・・かも知れませんね、というのがまさに今なわけです。
(↑あくまでザックリ、です。)
第12世代core「AlderLake」は何が違う?
ごく簡単に言えば基本設計(アーキテクチャと呼ばれる)が違います。
中でもプロセスルール(製造サイズ)が大きく注目されるので簡単に説明すると、製造サイズは『〇nm』というナノメートルサイズの単位で比較されます。
で、この製造サイズが小さい方が
- 単一面積あたりの性能が高い
- 同一性能あたりの製造コストが低い
- 消費電力が少ない
というメリットがあります。
ちっちゃい面積にいっぱい回路を敷くから部材が少なくて済むうえに高性能、さらに面積が小さいから電気の通り道が短く済んで稼働時の電力も節約。っていうイメージですね。
ちなみにAMD Ryzenが『7nm』なのに対し、最新のIntel第12世代coreは『10nm Enhanced SuperFin』。
数字で見ればRyzenのほうが小さいですが、Intel曰く「うちの10nmは他社の7nm相当の性能があるから『Intel 7』と呼んでくれ」とのこと。
第12世代core「AlderLake」の特徴
細かく掘ればいろいろあると思いますが、代表的なものは以下。
用途の異なるコアを同時搭載
第12世代core「AlderLake」の特徴と言えば、2種類の異なるコアを同時搭載しているところでしょう。
高性能コアと高効率コアの2種類を搭載し、パワーが必要な処理には高性能コア、そうでもない処理には高効率コアを割り当てることで、マルチスレッド処理時にCPUパワーをより適切に使用することができます。
DDR5/PCIe5.0対応
メモリ及び拡張スロットの最新規格「DDR5」「PCIe5.0」に対応しています。
これによりメモリやストレージ、グラフィックボードなどの周辺パーツへのアクセスが高速化し、より高い性能を引き出すことが可能になります。
▶Intel 第12世代core「AlderLake」特集ページ(ドスパラ)
第12世代core「AlderLake」購入時の注意点
ここまで「第12世代ってすごい!」という説明をしてきましたが、実際に購入を考えるなら注意するべき点が多数あります。
第12世代core「AlderLake」 CPU単体購入の場合
CPUを単体購入する方は自作PCに慣れた方だと思うのでわざわざここで書く必要もないと思いますが・・・。
ラインナップとしては以下。
ちなみに『K』はオーバークロック対応モデル、『F』はグラフィックを内蔵していないタイプを指します。
core-i9 12900K | 16コア24スレッド | ¥79,800 |
core-i9 12900KF | 16コア24スレッド | ¥76,800 |
core-i7 12700K | 12コア20スレッド | ¥58,000 |
core-i7 12700KF | 12コア20スレッド | ¥53,000 |
core-i5 12600K | 10コア16スレッド | ¥39,000 |
新形状CPUソケット『LGA1700』
第12世代coreからマザーボードの対応ソケットが変わり、LGA1700という新規格となります。
当然、以前までのソケットとは互換性はなく、CPUだけ買ってポン付けは不可能です。
もともと2世代ごとにソケット形状を変更するIntelって、長期間AM4規格を使い続けるユーザーフレンドリーなAMDからすれば新製品の乗り換えコストが高いと感じてしまうんですよね。
DDR5メモリの在庫不足と高価格
登場したばかりのDDR5は2021年末現在どの販売店も品薄(壊滅)状態。
さらに価格もDDR4に比べてまだまだお高いので購入のハードルは高いと言えます。
対応製品が増えて価格が落ち着いてくるのがいつ頃になるのか気になるところ。
マザーボードはDDR4版とDDR5版の互換性なし
第12世代core「AlderLake」を使用するためには対応ソケット搭載のマザーボードを新規購入する必要があり、さらに購入時にはDDR4メモリとDDR5メモリには互換性が無いためどちらのメモリを使用するかを選択する必要があります。
DDR5メモリが品薄&高価格であることを考えるといったんDDR4でも?と思いますが、とりあえずDDR4を積んでおいて買えたらDDR5に挿し替えようという作戦は不可能。
DDR4→DDR5に換装するためにはマザーボードも対応版を購入する必要が出てきてしまいます。
CPUクーラーの互換性なし
第12世代core「AlderLake」ではCPUの形状自体が大きく変化したため、今まではソケットが変わっても使いまわせていた既存のCPUクーラーが使えなくなりました。
メーカー各社の対応として既存のCPUクーラーが使えるように第12世代core用のマウントキットを配布しているところもあるようですが、場合によっては対応品を新規購入というケースもあるでしょう。
第12世代core「AlderLake」搭載PCを購入する場合
自作はせずに組み立て済みのPCを買うという場合はそこまでパーツの詳細を気にする必要はありません。
自分に必要なCPU、GPUの組み合わせを選ぶことができているなら、あとはメモリにDDR4かDDR5のどちらを搭載しているか位を気にしておけば、そんなに大きな違いは無いと思います。
まぁ実際には電源やストレージやその他パーツによる違いも最終的な性能や耐久性に影響しますが、そこはBTOメーカーが最低限の動作検証をしたうえで組みあがったものなので基本的に信頼してOKでしょう。
ただし、上記で説明したように既存のモデルとは互換性のない新規格のパーツが多いため、PC価格自体もちゃんと高い状態です。
とはいえせっかくのAlderLakeでDDR4に妥協して安い方へと流れるのも微妙な気がするので
おすすめはDDR5搭載モデルですが、相応に価格も吊り上がることを覚悟しましょう。
第12世代core「AlderLake」の乗り換えコストは総じて高い
ここまで述べたように、最新CPUであるIntel 第12世代core「AlderLake」の価格自体はそこまででもないが、周辺パーツも含めた乗り換えコストはIntelからでもAMDからでも総じて高い。
さらに、周辺パーツもドライバも対応ソフトもまだまだ出そろっていない状況でぼちぼち公開され始めているベンチマークの結果を見る限りでは、当然ながら性能アップはしていますが、性能の上がり幅が乗り換えコストに見合っているかどうかは微妙だと思います。
2022年中にはRyzenもDDR5対応モデルを発売するらしいので、大金をぶち込むならそこまで待ってもう少しいろいろこなれて来てからでもいいのかな?という印象。
新製品好きのPCマニアなら問題なく購入するんでしょうけど、なんとなく新しめの高性能PCが欲しいくらいの認識であれば、実はAlderLakeの登場で陰に隠れるRyzen5000番台あたりの方がトータルの価格と性能のバランスは取れているかも知れませんね。
セールの対象にも入りやすくなるでしょうから同時に注目してみましょう。