オンラインゲームやリモートワーク、SNS用の動画撮影など、自宅でのパソコン作業の増加に合わせて「声漏れ」「音漏れ」といった騒音を防止する簡易防音室の需要も高まっています。数年前までは大手音響メーカー製の100万円もするような防音室しかなかった選択肢に、ここ数年で10万円程度でも購入可能なお手頃製品が続々拡充されてきました。
本稿では自宅にリーズナブルに導入できる簡易防音室について、広さや組み立て方式、おすすめの用途に着目してまとめていきます。
メインターゲットは楽器練習用からオンライン通話用へ
もともと室内設置型の防音室はピアノやバイオリン、カラオケなどの音楽用途としての需要があって販売されてきました。しかし最近のオンラインゲームブームやコロナ禍以降のリモートワークの増加に伴って、チャット音声が外に漏れないために室内設置型の防音室を買い求める需要が急増しています。
この需要の変化に伴って、防音性能自体も楽器向けの高性能なものだけでなく、人の話し声を減衰するための簡易な防音性能に抑えたリーズナブルで買いやすい簡易防音室が増えてきています。
室内設置型防音室比較
一般販売されている室内設置型の簡易防音室の中から特にワイドサイズに対応したものを、防音性能と価格の面で比較します。
※比較のため非ワイドサイズも並べています。
製品名 | サイズ W*D*H(mm) | 防音性能 | 重量 | 価格 |
---|---|---|---|---|
OTODASUⅡ Light (吸音材なしタイプ) | 外寸)1240*1240*1912 内寸)1100*1100*1900 | 側面 : -23.2dB 背面 : -21.7dB | 30kg | 99,900円(税別) |
OTODASUⅡ DEKA (吸音材なしタイプ) | 外寸)1740*1740*1940 内寸)1600*1600*1890 | 側面 : -23.2dB 背面 : -21.7dB | 45kg | 227,770円(税別) |
OTODASUⅡ DEKA-G (吸音材ありタイプ) | 外寸)1740*1740*1940 内寸)1550*1550*1890 | 側面 : -24.2dB 背面 : -26.5dB | 85kg | 299,900円(税別) |
だんぼっちワイド | 外寸)1100*1100*1640 内寸)1040*1040*1480 | -30dB | 30.16kg | 113,400円(税込) |
CLASSIC PRO CQR500 | 外寸)1378*1378*1825 内寸)1238*1238*1800 | -10~15dB | — | 139,800円(税込) |
ONE-Z 00 | 外寸)1640*1640*1970 内寸)1585*1580*1940 | -15~20dB | 58kg | 350,000円(税込) |
VERY-Q Plus Gaming Booth | 外寸)1330*1560*1890 内寸)1220*1450*1830 | -19dB | 83kg | 599,500円(税込) |
REMUTE | 外寸)1960*1510*1900 内寸)1897*1447*1875 | -10~15dB | 76kg | 540,000円(税別) |
YAMAHA SBA05 -DIY.M- | 外寸)918*970*2040 内寸)837*904*1942 | -31dB | 80kg | 379,500円(税込) |
YAMAHA CEFINE.NS (2.0畳Hタイプ) | 外寸)1884*1884*2095 内寸)1776*1776*1963 | -41dB | 418kg | 1,276,000円(税込) |
▶OTODASUⅡ DEKA 公式サイト
▶だんぼっちワイド 公式サイト
▶CQR500 公式サイト
▶ONE-Z 00 公式サイト
▶VERY-Q Plus 公式サイト
▶REMUTE 公式サイト
▶CEFINE.NS 公式サイト
防音性能は-10~-40dBと様々だが
スペックの防音性能を比較すると製品によって減衰幅は-10~-40dBと様々です。しかしながら、これらの数値は各製品のカタログスペックであり計測法が統一されたものではありません。音は一般的に高音のほうが遮音しやすく低音のほうが漏れやすい性質がありますが、カタログスペックで公開されている防音テストの結果がどの帯域での減衰幅を表したものかも各社様々です。
頭一つ抜け出たYAMAHAの防音室を除けば、その他の簡易防音室の防音効果にはそれほど大きな差は無いものと考えて良さそうです。
参考)騒音とdB
日本騒音調査のサイトによれば、日常的な騒音は以下のようなdB(デシベル)となります。
目安 | 騒音値 | 騒音の例 |
---|---|---|
聴覚に異常をきたす | 110dB | 車のクラクション |
我慢できない | 80dB | 地下鉄の車内 |
うるさい | 60dB | 掃除機 |
支障がない | 40dB | 図書館 |
殆ど聞こえない | 20dB | ささやき声 |
簡易防音室といえど、約20dBも音を減衰できれば全く別の音環境になるであろうことが想像できます。
デスクのサイズとPCモニターの台数を考慮する
一部の高額高性能な防音室を除けば簡易防音室の防音性能はほぼ横並びなので、選ぶ決め手としては「サイズ」を基準に考えるのが良さそうです。そこで考えたいのが設置するモニターの台数です。PCモニターの枚数が実質的にデスクの横幅を決める要素になります。
例えば、リモートワーク中のオンライン会議に用途を絞った場合は設置するPCはノートPC1台でも事足りるでしょう。となればモニターは1枚(ノートPC)なので、デスクも最低限の幅があればOK。
デスクの幅を少し手狭ですが800mm程度と考えれば簡易防音室は最もリーズナブルな最小クラスのものでも事足りることになります。上記の比較表に取り上げた簡易防音室はすべて当てはまります。
例えば、PCゲームに用途を絞った場合はモニターは最低限の1台で済みますが、マウスをぶん回すための空間を考えてノートPC1台のときよりも若干の余裕が欲しくなります。
仮にデスク幅を1200mmと考えれば、簡易防音室の中でも「ワイド」や「ゲーミング」サイズのものが必要になります。
例えば、PCゲーム+動画撮影やライブ配信を用途に入れる場合はモニターは2枚は欲しくなります。
仮にデスク幅を1600mmに設定するのであれば、簡易防音室の中でもかなり選択肢は限られてきます。
簡易防音室をコスパ&サイズで選ぶ
防音性能の面で大きな差がないという前提で選ぶのであれば、『OTODASUⅡ DEKA』の吸音材なしタイプがおすすめです。内寸で1600mm幅を確保しつつ30万円を切る価格設定はかなりの魅力。さらに防音性能を高めるために吸音材ありタイプを選ぶのであれば内寸が吸音材のぶん狭くなることも考慮しましょう。
また使用予定のデスクサイズの要求を満たした前提で考えるなら、サイズ以外の「色」や「デザイン」を考慮に入れて選ぶ事もできます。ゲーミング用途を強調している製品はPCや周辺機器のライティング効果を増すためにブラックアウトされているものが多く、実際の使用感や所有欲を満たすことができるでしょう。
なお絶対的な防音性能を第一に考えるのであれば、防音室はYAMAHA製一択になることも覚えておきましょう。