2022年4月に発売されたRyzen5 5500をベンチマーク比較しました。
あまり専門的な深堀はせず(できず)、それほどPCに詳しくない方にもわかりやすい『ざっくり』な内容で説明します。
Ryzen5 5500スペック
Ryzen5 5500 | Ryzen5 5600 | Ryzen5 5600X | Ryzen5 3600 | |
コア数 | 6 | 6 | 6 | 6 |
スレッド数 | 12 | 12 | 12 | 12 |
基本クロック | 3.6GHz | 3.5GHz | 3.7GHz | 3.6GHz |
最大ブーストクロック | 4.2GHz | 4.4GHz | 4.6GHz | 4.2GHz |
L1キャッシュ | 384KB | 384KB | 384KB | 384KB |
L2キャッシュ | 3MB | 3MB | 3MB | 3MB |
L3キャッシュ | 16MB | 32MB | 32MB | 32MB |
TDP | 65W | 65W | 65W | 65W |
価格(2022年4月末時点) | ¥23,300~ | ¥28,800~ | ¥29,480~ | ¥23,980~ |
まず同じRyzen5 5000番台でのスペック比較です。
5600と5600Xはスペック上ほぼ同等で、実際に大手各社ベンチマークを読み漁ってもまったく同じような結果を叩き出しています。
そのためここでは5600と5600Xの違いは取り上げず、ほぼ同じものとして読み進めてください。(一応、Xはオーバークロック対応モデル。)
Ryzen5 5500に関しては5600(X)とのスペック上の違いはほぼL3キャッシュ容量のみです。
Ryzen5 3600の廉価モデルである3500はスレッド数を半分に制限されたためマルチスレッド性能面で大きなハンデを背負いましたが、5600(X)に対する5500はより緩やかなスペックダウンモデルであると言えます。
キャッシュメモリはメインメモリよりも「小さいが速い」メモリで、CPUが頻繁に情報の読み込みを行う場合に処理速度(情報取得速度)を向上させる効果があります。
ゲーミングPCにおいてはゲーム性能そのもの(処理→描画の工程そのもの?)に影響があると言われているため、Ryzen5 5500では「どの程度のゲーム性能の低下が見られるか」が大きな判断の分かれ目になりそうです。
検証環境
CPU | Ryzen5 5500/5600X |
CPUクーラー | サイズ 虎徹Mark.Ⅱ |
GPU | RTX3070 |
メモリ | 32GB |
ストレージ | M.2 NVMe SSD 500GB×2基 |
マザーボード | B550M SteelLegend(P2.30) |
電源 | 750W/85+ |
RTX3070を軸としたミドルスペックゲーミングPCといえる構成です。
特に目新しい装備はなく、わりとオーソドックスなスペックかなと。
CPUベンチマーク
CINEBENCH R23
歴代Ryzen5のCINEBENCH R23比較です。
Ryzen5 5500はシングル/マルチ共に上位モデルのRyzen5 5600Xに次ぐスコアで、どちらも10%前後下回っていることがわかります。
1世代前の3000シリーズとの比較では廉価モデルの5500が正規ナンバリングのRyzen5 3600を上回るスコアを叩き出しています。
また、同じ廉価モデルのRyzen5 3500は6コア6スレッドとスレッド数を半分に制限されたためマルチ性能が大きく落ち込んでいましたが、5500は上位モデルの5600Xと同じ6コア12スレッドを維持しているため見劣りすることなくスコアを伸ばしています。
3D MARK CPUprofile
3D MARKの「CPU profile」を使用したRyzen5 5500/5600X/3600の比較です。
5500と5600Xは概ね~10%程度のスコア差に収まり、それほど大きな性能差ではないことが伺えます。
また、スコア上は3600が20%近く低い数値になっています。
ゲームFPS計測
FF15 Bench
FF15ベンチ(フルスクリーン/フルHD/高品質)による5500/5600X/3600の比較です。
12000が判定のボーダーであるため5600Xが「非常に快適」、5500が「とても快適」と結果が別れてしまいましたが、スコアでは5~6%程度の差に収まっています。
またベンチ計測時の各グラフをみると、5600XではGPU loadがほぼ稼働100%に張り付いているのに対し5500ではCPU loadが若干ビジー気味でGPU loadの稼働が少し落ちている個所があります。
Ryzen5 5500はわずかにRTX3070の足を引っ張り、その分平均fpsが落ちていると読みとれます。
Ryzen5 3600との比較では若干3600の方がスコアが低く出ていますが、大きな差はありません。
Escape From Tarkov
Escape From Tarkov(SCAV/shoreline)での5500/5600Xの比較です。
フレームレートでの比較では5600Xに対して5500が10%超下回っています。
また計測時のグラフを見ると、5600XではGPU loadがほぼ100%に張り付いているのに対して5500ではCPU loadが上がる個所でGPU loadが大きく落ち込んでいるのがわかります。
この傾向はFF15ベンチの計測時よりも顕著で、あきらかにRyzen5 5500がRTX3070のボトルネックになってしまっているということがわかります。
Ryzen5 3600との比較では差がほとんど見受けられず、若干3600の方がフレームレートが上回っていますが、これは全くのイコール条件の計測ではない(ステージは同一だがルートが異なる)ための計測誤差の範囲かも知れません。
Ryzen5 5500評価
Ryzen5 5500はカタログスペック以上にゲーム性能が落ち気味
Ryzen5 5600Xのスペックダウン&廉価モデルとして市場投入されたRyzen5 5500は、カタログスペック上ではL3キャッシュの容量が半減しているものの、ほとんど見劣りしないスペックを持っています。
しかし、ゲーム用途ではL3キャッシュ半減の影響なのかカタログスペック以上にフレームレートなどの落ち込みが確認できます。
なお、1世代前のRyzen5 3600(L3キャッシュは32MB)との比較ではゲームプレイ上の計測でほぼ同等の結果が出ています。
これはCPUの処理性能が向上した5500とキャッシュ容量で勝る3600で、今回テストした環境では結果的にほぼ同等のゲーム性能を発揮しているものと読み取れます。
Ryzen5 5500はRTX3060Ti以下と組み合わせたい
RTX3070との組み合わせでの計測結果では、Ryzen5 5500がボトルネックとなってGPUの性能を充分に引き出せていない場面が確認できました。
そのためRyzen5 5500と組み合わせるGPUはRTX3060Ti以下のモデルを選択する方が良いと思われます。
5500と5600Xとの価格差は約5,000円(2022年4月時点)。
さらにGPUのグレードを下げる分も加味して、Ryzen5 5500は5600Xで構成するよりも1段コスト寄りに振ったミドルスペック構成のPCがおすすめになると思います。
Ryzen5 5500は市場投入が遅すぎた
ここまでの計測結果で見れば、Ryzen5 5500は廉価モデルとしてのスペックダウン幅と価格差を考えれば割と良いコスパモデルだと思います。
実際、デスクトップ用では1世代前のモデルであるRyzen5 3600とほぼ同等のスコアを記録しており、実勢価格の面でもほぼ同額です。
が、やはり市場投入時期が遅すぎた感が否めません。
というのも、2022年にIntelから市場投入された第12世代core、とりわけミドルスペック帯ではcore i5-12400Fが「性能はほぼRyzen5 5600Xと同等」且つ「価格はRyzen5 5500以下」という圧倒的コスパを誇っているから。
▶2022年ミドルスペックで圧倒的おすすめ core i5-12400(F)
Ryzen5 5500をはじめとするRyzen5000番台の追加ラインナップは、第12世代coreよりも前、できれば5000番台デビュー後間もないタイミングで市場投入されていれば、第12世代coreが登場するまでの1年強の期間でもっとシェアを獲得できていたのでは?と思ってしまいます。