プロの動画編集者にとって、PCのスペックは「作業時間」に直結します。しかし、アドビ(Adobe)が公開している「最小スペック」や「推奨スペック」を鵜呑みにすると、「4K編集がカクついて仕事にならない」という事態に陥りがちです。
この記事では、2025年現在、Adobe Premiere ProやAfter Effectsを使ったプロの動画制作(特に4K)で後悔しないための「実用的なスペック」を、特に重要なメモリ(RAM)とVRAMに焦点を当てて解説します。
記事の要点(結論)
2025年現在、「公式の推奨スペック」はプロの現場では通用しません。快適な作業環境を構築するための「実質的な最低ライン」は以下の通りです。
- RAM (メモリ): 32GBが「実質的な最低ライン」
「推奨16GB」は、PremiereとAfter Effectsの同時起動ですぐに限界が来ます。快適な作業には32GBが必須、理想は64GBです。32GBのRAMは、Adobe Premiere ProのようなRAM集約型のアプリケーションに最適です。
- GPU (VRAM): 8GBが最低、理想は12GB以上
GPU本体の性能(RTX 4060以上)も重要ですが、VRAM(GPU専用メモリ)容量が8GB未満のPCは4K編集では避けるべきです。
- CPU: Core i7 / Ryzen 7 以上
Premiere(書き出し)とAfter Effects(プレビュー)では求められる性能が違うため、両方をこなせるCore i7 / Ryzen 7以上が基準です。
- ストレージ: 高速SSDは「必須」
OSやソフト、キャッシュの読み書き速度は作業効率に直結します。
1. なぜ「RAM 32GB」が最低ラインなのか?
PC選びで最も陥りがちな罠が「RAM(メモリ)容量」です。
Adobeの公式スペックでは「16GB」でも動作する(最小)、「32GB」を推奨とされています。しかし、これはあくまで「ソフト単体」での話です。
プロの実際の作業では、「Premiere Proで編集し、After Effectsでモーショングラフィックスを連携させ、ブラウザで素材を探し、Photoshopでサムネイルを作る」といった複数のソフトを同時に起動します。
この瞬間、16GBのメモリは即座に枯渇し、PC全体の動作が極端に遅くなります。プレビューがカクつくだけでなく、最悪の場合ソフトがフリーズします。
32GBは、このマルチタスクな作業環境を支えるための「実質的な最低ライン」です。もし4K以上の高解像度素材や、複雑な3D、長時間のAfter Effects作業をメインで行うのであれば、64GBを搭載することで、PCは最高のパフォーマンスを発揮します。
2. GPUの真実:VRAM容量が8GB未満のPCは買うな
動画編集において、GPU(グラフィックスカード)はプレビューのリアルタイム再生やAIエフェクト、書き出し時間の短縮に直結します。
ここで見るべきは、GPUの型番(例:GeForce RTX 4060以上)と、それ以上にVRAM(ビデオメモリ)の容量です。
VRAMとは?
VRAMは、高解像度の動画素材やAIエフェクト、3Dモデルなどを一時的に保持する「GPU専用の作業台」です。この作業台が小さい(VRAMが少ない)と、データが溢れてしまい、GPU本体がどれだけ高性能でも処理が詰まってしまいます。
「4GB」では不足
Adobe公式の最小スペック(4GB)は、現代の4K編集では機能しません。
「8GB」が最低ライン
DaVinci Resolveでの作業や、Premiere ProのAIノイズ除去、AI文字起こしなどを多用する場合、VRAM 8GBが最低限必要です。
「12GB」が理想
4K解像度での複雑なプロジェクト、3Dモデリング、AI画像生成などを本格的に行う場合は、12GB以上のVRAMを搭載したGPU(例:RTX 4070 / 4080 / 5070 Tiなど)が理想です。
3. CPUの選び方:PremiereとAfter Effectsの違い
CPU(プロセッサ)はPCの「指揮者」であり、ソフトによって求められる能力が異なります。
Premiere Pro(書き出し)
動画の最終書き出し(エンコード)では、CPUのコア数が多いほど処理が速くなる傾向があります。
After Effects(プレビュー)
エフェクトのプレビューやリアルタイム再生では、コア数よりも1コアあたりの処理速度、すなわちクロック速度(GHz)の高さが効いてきます。
2025年現在、両方の作業をバランスよくこなすため、Core i7 / Ryzen 7以上のCPU(推奨クロック4.5GHz以上)を選んでおけば間違いありません。予算が許せばCore i9 / Ryzen 9を選べば、あらゆる作業がさらに高速化されます。
4. ストレージ:SSDは「必須」、HDDは「倉庫」
ストレージ(データの保存場所)は、もはや「SSD(ソリッドステートドライブ)」一択です。
HDD(ハードディスク)は、読み書きが非常に低速です。HDDを作業場所に設定すると、PCの他の部分がどれだけ高性能でも、ここで深刻なボトルネックが発生します。
OS・ソフト用(Cドライブ):高速なNVMe M.2 SSDが必須。
キャッシュ・作業用:OS用とは別に、作業用の高速SSDを搭載するのが理想。
データ保存用:HDDは、編集が終わったプロジェクトの「倉庫(アーカイブ)」としてのみ使用しましょう。
