2024年12月のSteamハードウェア調査でAMDのCPUシェアが40%に迫っています。これからもさらにシェアを伸ばしそうなAMD Ryzenを選ぶ理由、おすすめする理由とは何なのでしょうか。
AMDがCPUシェアを拡大
グラフは2024年下半期のSteamユーザーのCPUシェアです。ここ数年間ずっと30%前後をキープして来たAMDのCPUシェアが、9月以降に急伸していることがわかります。
AMDのCPUシェアは、マルチコア性能とコスパで高い評価を受けたRyzen 第2世代シリーズ(2017~18)あたりから大きくシェアを伸ばしました。そしてCPUと言えばIntelとまで言われたIntel1強時代の牙城に食い込み、ここ数年は30%前後で安定していました。
このバランスが急激に動き始めた理由としては当然AMD Ryzenの性能の進化が挙げられます。が、さらに後押ししたのは2024年のIntel製CPUの不具合問題だったと言えるでしょう。
Intelの不具合問題
Intel 第13・14世代Core i5~i9は2024年初めころから世界中で不安定動作(特にゲーム中のクラッシュ)の報告が相次いでいました。そして複数回の修正データの公開や製品保証の延期の発表などを経て、この不具合問題は9月に「異常な電圧上昇および発熱による劣化」であると原因を特定。最終的な対応パッチが公開され一応の解決となりました。
ただし問題の解決にはマザーボードのUEFI(BIOS)更新が必要であり、更新作業にはある程度のPCに関する知識も必要になります。すでに購入済みのユーザーの中には自分でデータ更新が出来ないケースや、そもそも不具合問題を知らない、自分が該当するかわからないケースなども一定数内在するでしょう。またPCやPCパーツを購入する際に”対策済み品”なのかどうかの確認も必要で、全ユーザーレベルでの完全な解決までにはもう少し時間がかかるものと思われます。
この不具合問題が拡散されたことである種のIntel製CPUの買い控えが起こり、結果としてライバルであるAMD Ryzenにユーザーの一部が流れた可能性は大いにあると思います。
▶Intel 第 13 ・14 世代 CPU 不具合対策 UEFI ( BIOS ) の更新方法(ドスパラ)
AMD Ryzenの強み
先に述べたIntelの不具合問題だけではなく、AMD Ryzen CPUにはゲーマーに選ばれる数々の魅力が存在します。
低価格
まず、なんと言ってもAMD製CPUがIntel一強の中でも生き残って来れた理由として「低価格」が挙げられます。
同程度の性能なら『AMDの方が人気はないが安い』という評価。これは古くからAMD製CPUに親しんできたPCユーザーならおそらく共通して持つイメージでしょうし、実際にIntelに比べて価格が安かったのも事実です。
その後Ryzenシリーズは代を重ね、最新のZen5世代9000シリーズに於いてはCPU単体の価格ではIntelとそこまで大きくは変わらなくなりました。
ではAMD=低価格という評価が当てはまらなくなったのか?というとそんなことはありません。
CPUソケット規格の長期運用
AMDはCPUソケットを何代にも渡って共通規格とする特徴があります。最新規格はAM5システムですが、1代前のAM4システムは2016の登場から2022年のAM5登場まで6年に渡って最前線でAMD製CPUを支えてきました。そしてAM5登場以降もAM4対応のCPUをリリースしており、2025年でも現役システムとしてゲーミング界隈でも活躍しています。さらにAMDはAM5規格についてもAM4同様に長期スパンで運用する方針を打ち出しています。
これによりユーザーには、CPUを換装してPCの性能強化を考える際に、CPUソケット規格が変わらない範囲であれば『マザーボードを替えることなく高性能CPUを選択できる』というメリットがあります。また、販売メーカーにとってはマザーボード在庫が腐りにくいというメリットもあります。
対してIntelはほぼ必ず、CPU世代が2代進む毎に対応するCPUソケット規格を変えてきたため、PCの性能アップを考えるときには必ずと言っていいほどCPUに合わせてマザーボードの交換が必要になります。
結果、PCを構成するシステム全体で見たときにIntelよりもAMDの方がコスパが良い。ということは引き続き言えるでしょう。
省電力
AMD Ryzenは省電力性能でも多くの世代、多くのモデルでIntelに比べて優れていると言えます。
CPUの性能及び省電力性=電力効率の目安になるポイントとして『プロセスサイズ』が挙げられます。プロセスサイズとは、ざっくり言えばCPUを構成する部材をどの程度小さく高密度で設計するかのサイズ感を表します。より小さい範囲に高密度で設計できれば、単純に単一面積あたりの性能が上がります。そして各部材間の密度が高いので間隔が狭く、その間を行ったり来たりするための信号=電力は少くて済むことになります。さらには使用する部材が少く済むので製造コストも下がります。
AMD Ryzenの最新Zen5世代はプロセスサイズが「4nm」なのに対し、Intel 第14世代Coreは「Intel7(10nm)」となっています。(とはいえプロセスサイズの数値化の基準は曖昧なところがあり、数値差がそのまま性能差になるわけではないので注意してください。)
Intelは2024年10月リリースの最新Intel Core UltraシリーズCPUでさらにプロセスサイズを微細化し、省電力性能でもAMDに負けない性能を実現したと強調しています。が、裏を返せばそれまでは省電力性能に於いてAMD Ryzenに水を開けられていたことを指し、Pコア(高性能コア)とEコア(省電力コア)を搭載した独自の省電力システムもRyzenに追いつくための苦肉の策だったと考えられるでしょう。
シングル/マルチコア性能
数年前(Ryzen Zen2~3世代頃)までは『シングルコア性能はIntel Core、マルチコア性能はAMD Ryzenが優れている』という評価が一般的でした。さらに当時は「ゲームのパフォーマンスはシングルコア性能に依存する」という状況であったため、ゲーミング性能=Intelのイメージが強くありました。
が、Ryzenは世代を重ねるにつれて弱点であったシングルコア性能を強化し、シングルコア/マルチコア性能ともにIntelと並ぶ評価を手にしていきます。同時にゲームタイトルのマルチコア環境への最適化も進み、ゲーミング性能=Intelというイメージは徐々に薄れていきました。
性能面で同等、もしくはそれ以上という状況の中で、Intelとの比較点としてこれまで述べてきたAMD Ryzenの他のメリットも改めて評価され、徐々にシェアを伸ばすに至ったと考えられます。
内蔵グラフィックス性能
GPUを搭載するゲーミングPCには直接的には関わらない場合も多くありますが、AMD Ryzenの強みとして内蔵グラフィックスの性能が高いことも挙げられます。
というのも、AMDはRadeonシリーズを開発するGPUメーカーでもあり、ここで得られた技術をAPU(CPUにグラフィック機能を搭載した統合プロセッサ)に投入することで進化してきたからです。
事実、AMD Ryzen 8000GシリーズAPUに搭載される内蔵グラフィックスRadeon 700Mシリーズはすでにエントリー向けスペックのGPUに迫る性能を叩き出しており、2024年頃からグラボを搭載しない高性能ミニPCに採用されるケースが増えています。
AMDのゲーミングCPU Ryzen X3Dシリーズ
AMD Ryzen=高性能CPUというイメージを強く印象づけた立役者としてRyzen X3Dシリーズの存在は大きいでしょう。
2022年に登場したAMD Ryzen7 5800X3Dは”最強のゲーミングCPU”という言葉を強く押し出した最初のX3Dシリーズであり、AM4システムでは今でもRyzen7 5700X3Dが現行モデルとして人気を博しています。またその後に続くAM5システムでも7000X3D、9000X3Dとデスクトップ向けCPUのナンバリングに沿ってX3Dシリーズをリリースしており、ゲーム界隈で確固たる評価を確立しています。
3D-V Cacheテクノロジー
X3DシリーズはAMD独自の「3D-V Cache」テクノロジーによってL3キャッシュ(メインメモリよりも高速なキャッシュメモリ)の搭載量を増やし、CPUがメインメモリにアクセスする頻度を減らすことで処理の高速化を実現したCPUシリーズです。特にゲーミング性能に於いてこのキャッシュメモリ搭載量が及ぼす影響が大きく、ストリーミングでマニアックな人気を博す重量級タイトル『Escape from Tarkov』のパフォーマンス向上に効果的だったことからゲーム界隈でも大きく話題になりました。その他のタイトルでも全般的にパフォーマンスの向上が期待できることから、X3DシリーズはゲーミングCPUとしての評価を高めています。
AMD Ryzen搭載ゲーミングPC
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