2021年8月に登場したRyzen 5000Gシリーズから、この記事ではRyzen5 5600Gをベンチマーク。
グラボ価格が高止まりしている2021年現在、グラボを必要としないAPUという選択肢でどこまで実用に耐えられるのかを考察します。
Ryzen5 5600G 基本スペック
製品名 | Ryzen5 5600G |
コア/スレッド数 | 6コア12スレッド |
クロック | 3.9GHz(最大4.4GHz) |
キャッシュ | L2:3MB L3:16MB |
定格電力(TDP) | 65W |
最大温度 | 95℃ |
対応ソケット | AM4 |
グラフィックス | Radeon™ Graphics |
GPUコア数 | 7 |
グラフィックス周波数 | 1900MHz |
Ryzen5 5600GはZen3世代のCPUを備えた2021年最新APU。
同じくAMD製APUであるRyzen PRO 4000Gシリーズと比較するとGPU部は同構成で、CPUがZen3に更新されたことで処理能力が向上している。
Ryzen5 5600Xとの比較ではL3キャッシュの違い(Xが32MB、Gが16MB)などもあってCPU性能としては5600Xに軍配が上がるが、5600GはGPUを備えているためグラフィックボードを使用せずにコストを抑えたPCを構成できる利点がある。
単体価格では2021年9月現在どちらも約¥36,000と並んでいる。
CINEBENCH R23計測
CINEBENCH R23を使用してCPUのシングル/マルチコア性能を計測していきます。
比較するのは同じRyzen5から、Ryzen5 3500、Ryzen5 3600、Ryzen5 5600X。
シングルコア性能 | マルチコア性能 | |
Ryzen5 3500 | 1192 | 6494 |
Ryzen5 3600 | 1243 | 9398 |
Ryzen5 5600G | 1443 | 10510 |
Ryzen5 5600X | 1536 | 11088 |
Ryzen5 5600GはZen3世代CPUを採用しているため、シングルコア性能でもマルチコア性能でも3500、3600を大きく引き離す結果を叩き出しています。
また、ゲーミングPC用途で人気を博する対Ryzen5 5600Xではさすがに分が悪いものの、その差はごくわずかしかありません。
『GPUを統合する代わりにCPU性能を引き下げたモデル』というイメージがあるRyzen5 5600Gですが、実はその性能は5600Xと比べてもほぼ遜色のないものだということがわかります。
Ryzen5 5600Gのグラフィック性能
Ryzen5 5600Gは“Vega”ベースのGPU「Radeon™ Graphics」を搭載しています。
普段からグラボ搭載のゲーミングPCを愛用するユーザーにとっては、一昔前までは内蔵グラフィックと言えば『PCとして最低限モニターが映る程度でしょ?』という認識でしたが、このRadeon™ Graphicsはどの程度使えるものなのか。
ゲームタイトルによって動作の基準は大きく異なりますが、参考例として2D、3Dそれぞれ数本のゲームタイトルでフレームレート計測を行いました。
2Dゲームはド安定で不足なし
BABA is YOU
まずは2Dゲームタイトルの中でも処理が軽い方だと思われる『BABA is YOU』。
PC版で好評を博し、Switch移植も果たしたパズルゲーの名作。
計測の結果、フレームレートは60fps貼り付きでド安定。
挙動が荒れることもなく、全く違和感も不足も感じずにプレイ可能です。
Rim World
2Dゲームの中では処理するキャラ数、情報量がかなり多めのコロニーシミュ系の名作『Rim World』。
多数のModも導入出来て無限に時間を消費してしまう時間ドロボーゲーの代表作。
こちらも計測の結果はフレームレート60fps貼り付きで超安定。
よほど特殊な仕様でもない限り2Dゲームは余裕で対応できそうですね。
3Dゲームは軽めのタイトルならしっかりプレイ可能
Minecraft BedrockEdition
Minecraftと言えば大きくJAVAとBedrock(統合版)の2種類に分類されますが、今回はSwitchやスマホとのクロスプレイでユーザーの裾野が広いBedrockでテスト。
なお、設定は『シミュ距離:8』『描画距離:48チャンク』で計測。
結果、フレームレートはアベレージ120fps付近で推移。
この性能であればSwitchやスマホよりも格段にスムーズなプレイが可能で、描画距離を広く設定できるためオブジェクトやバイオームの発見、探索にもかなり有利に働きます。
PCに乗り換える理由としても充分で、入門機として最適な性能と言えるでしょう。
VALORANT
eSPORTSタイトルとして盛り上がりを見せるVALORANT。
オンライン対戦FPSタイトルと言えばその性質上フレームレートの安定が絶対条件で高価なグラボが必須のイメージですが・・・。
テストはソロで射撃場マップを回遊して計測しているので実際のマルチプレイ時よりは負荷が少ない状況だと思われます。
結果はデフォルトのグラフィック設定でアベレージ200fpsオーバーを叩き出しました。
もともとFPSタイトルの中では軽い部類ではありますが、内蔵グラフィックでもここまで安定して動くのは正直予想外。
高リフレッシュレートゲーミングモニターを活用した高fpsプレイも視野に入ります。
APEX LEGENDS
Vtuberのゲーム配信でも絶大な人気を誇るAPEXでもテストを敢行。
VALORANTと同じく対戦FPSタイトルで、フレームレートがそのままアドバンテージにつながるハイスピードな撃ち合いが魅力。
さすがにAPEXではグラフィック設定を最低に落としてもアベレージ44fpsという結果に。
この数値ではまともにプレイすることが難しく、無理にプレイをしていてもストレスが勝ってしまいそうな結果です。
グラフィック性能は正直予想外の大健闘
あらためて言いますが、上記のフレームレート計測はすべてRyzen5 5600Gの内蔵グラフィックを使用した結果です。
さすがに中〜重量級3Dタイトルは難しいという結果になりましたが、ここまで善戦すること自体が正直予想外。
「ちょっとしたゲームなら・・・」の枠を大きく超えた性能に驚かれる方も多いのでは?
当然、Webサーフィンや動画視聴には全く不満を感じることなく答えてくれますし、イラスト作画などのクリエイティブにもプロユースとは言いませんがしっかり対応可能です。
Ryzen5 5600Gの最大の利点
ここまででCPU性能は最新のRyzen 5000シリーズとほぼ同等、GPU性能も普段使いからゲーム用途まで幅広く対応することがわかるベンチマーク結果になったRyzen5 5600Gですが、最大の利点はやはり『省スペース』でしょう。
PC構成上もっともスペースを喰うのはグラボであり、そしてグラボの消費電力を支える大容量電源です。
このスペースを節約できるためPCケース選択の幅が広がり、Mini ITXサイズのマザーボードやPCケース、もしくはベアボーンキットを使用することで極限まで小さなPCを構築することが可能。
それでいて上記ベンチマークでわかった高性能を有している。
へービーゲーマーならグラボの搭載が前提になるので5600Gを選ぶ必要はなく、5600Xやその他GPUを内蔵しないCPUを選べばOK。
この用途の切り分けが自分の中ではっきりしているのであれば、Ryzen5 5600Gはかなり使えるCPU(APU)になります。
さらに2021年現在は仮想通貨マイニングや半導体不足の影響でグラフィックボードの価格が高止まりしている状況が続いているため、グラフィックボードが要らないPC構成は価格を抑えるという意味でも大きな恩恵があります。
リモートワークや家中時間の増大でPC需要が高まっているなかでは最適な選択肢のひとつと言えるでしょう。
おすすめのRyzen5 5600G搭載PC
BTOならSlim Regulus AR5(ドスパラ)
Ryzen5 5600G搭載PCのおすすめは『Slim Regulus AR5』。
グラフィックボード非搭載の利点を活かすスリムケース採用なので配置に困らずデスク周りをすっきりさせることが出来ます。
メモリ16GB、ストレージ500GB NVMeSSDを標準搭載しているため構成はこれで充分ですが、ストレージ容量に不足を感じるなら構成カスタムでSSD容量をアップしましょう。
▶Slim Regulus AR5 Ryzen5-5600G搭載モデル
さらに小型化を目指すならベアボーンキット
小型化を重視するなら、ちょっとした自作知識が必要になりますがベアボーンキットがおすすめです。
『ASRock DeskMini X300』はマザーボードや電源を組込済みのキットなのでメモリとストレージを買い足せば簡単に超小型PCを組むことが可能。
AM4ソケット搭載なのでRyzen5 5600Gにも対応しています。
▶ASRock ベアボ―ンキット DeskMini X300
ただし注意点が一点。
BIOSバージョンによってはRyzen5 5600Gに非対応なので、購入の際はショップにBIOSバージョンの確認を行いましょう。
すでに最新のBIOS(P1.70以降)にアップデートされた在庫であれば5600Gを使用可能。
そうでない場合は自分でもアップデート出来ますが、アップデートにはX300を稼働させることができるAPUが必要になる(X300キット単体ではアップデート不可)ため注意が必要です。